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2011年8月24日 (水)

◆四角形

蛍光灯の騒ぎの後“危ない話はやめよう”と言う事になったそうだ。
蛍光灯を点け、自然とC君に視線が集まる。
なぜなら、ここまで一言も声を発していないのはC君だけだったからだ。

C君が言った。
 「俺、話せる事ないよ。でも、うーん・・・まぁ良いか。」
言いにくそうに、言葉を選ぶように、
 「怖い話じゃないよ。実は・・・」

---
高校の途中まで、それが自分だけと思っていなかった、と言う。

C君は物心ついた時、他人の頭上に何か乗っているのに気が付いた。

それは、四角いモノ。
ある人は薄く、ある人は濃く、ある人には無い。
人により“四角い何か”が乗っている。何か分からない。
でも“四角い何か”がある。

ある時、今まで見た中で一番濃い“四角形”を持つ人がいた。
それは、親戚のおじさん。

小学生の頃、夏休みのお墓参りに親戚が集まった時だった、と言う。
元気に笑いながら、親戚同士で話をするおじさん。
その頭上には、クッキリした“四角形”が乗っていた。

その時、初めて“四角形”が何か分かった。
まさに先ほど、お墓参りで見たもの。

それは墓石だったそうだ。

・・・2日後、そのおじさんは心臓発作で亡くなった。

中学生になり、幾度かの経験を通して、何となく分かってきた。
頭上の墓石が濃い人ほど、先が短い。
また、濃くても本人ではない場合もあるらしい。たとえば、親とか兄弟とか。

しかし、それが特別の能力だと思っていなかったそうだ。
他の人にも見えると信じていたらしい。
この事を、特に誰とも話さなかったからかもしれない。

高校生の頃。
商店街を抜けて帰宅の途に就く。
夕方の買い物で賑わう商店街。皆の頭上には、四角形。薄い人、濃い人。
その時、一人の老女と目が合った。
その老女が、突然近寄ってきて、

老女 「あんた見えるね?」

何の話だ?何が見えるって?何を言ってるんだ?
急な問いに、C君は慌て、混乱し、返答が出来なかったらしい。

老女 「頭の上のモノ、見えるね?」
C君 「あ・・・はい。」

やっと一言の返事。

老女 「それを相手に言っちゃダメだよ。」

この時、自分にしか見えない事を、初めて悟ったと言う。

老女 「相手に言うと、その人が傷つくからね。」

その日から今日まで、この能力は誰にも言わず、自分の中にしまってきた。
これは、ここだけの話で、これからも誰にも言うつもりはないんだ。
C君は、そう締めくくった。

この話を聞いていた、Y君が割り込んだ。

Y君 「今も見えるの?」
C君 「ん?・・・うん・・・見えるよ。見ない様にしてるけど。」

C君は言い難そうに答える。

Y君 「俺の上にも見える?」
C君 「俺、言わないよ。だって・・・」
Y君 「頼むから見てくれないかな?どんな結果でも良いからさ。」
C君 「俺、嫌だよ。ダメだよ。」

押し問答が始まった。
Y君のお願いは、誰が見ても面白半分では無さそうだった。
お願いは途中から懇願になった。誰もが不思議そうに必死なY君を見ていた。
ついに、C君が折れた。

C君 「分かった。Yの上に・・・見えるよ。」
Y君 「色は?薄い?濃い?」

C君は見える事実だけを教え、終わらせたかったのだろう。明らかに嫌な顔をした。

Y君 「頼むよ。教えて。色は薄いの?濃いの?」

沈黙。そして、ため息。

C君 「・・・かなり」

下を向いたまま

C君 「濃い目・・・だと思う。」

── 静寂 ──

Y君 「そう・・・。」
C君 「・・・うん。」
Y君 「・・・そっか・・・ありがとう。」

全員が無言の中、Y君が部屋から出て行った。

そして、全ての話が終わり、寝る事になった。
---

Y君のお父さんが実は入院中だったこと。そして最近亡くなったと聞いたのは、この旅行の1か月後だった。

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